古本を買いにいつもの書店にいくと、
入り口に6月30日をもって閉店する旨の張り紙があった。
思わず、この店の地の利の悪さやこの町の人口急減のニュースや
うなだれているだろう店員たちの顔が脳裏をよぎった。
店の中はきっと重い空気が充満しているであろうと想像しながら足を踏み入れると、
さっきの杞憂とは裏腹に、
そこには、いつもと同じ雰囲気で、いつもと同じ声で、今日も元気に商売をしている人々の姿があった。
少し遠い場所にいた店長の顔も何かが吹っ切れたような表情に見えた。
閉店という事実を真っ向から受けとめて、
店長として「自分の手で」「この店を閉めなければならない」という役目のつらさを、
この人は、きっとどこかで呑み込んできたに違いない。
私は軽く深呼吸しながら、
拳をぎゅっと握って、厳粛な気持ちで、奥にある書棚に向かった。
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